元気いっぱいの保育園児しげるが活躍する、等身大の子どもの日常とファンタジーが絶妙に同居している「いやいやえん」のお話は、中川李枝子さん作・大村百合子さん絵の名作です。絵本から児童書へ、読書の楽しみが広がる時期にぴったりな「いやいやえん」をご紹介します。
いやいやえん
作: 中川 李枝子
絵: 大村 百合子
出版社: 福音館書店
対象年齢:
読んであげるなら・4才から
自分で読むなら・小学低学年から
「いやいやえん」は、中川李枝子さんの文に大村百合子さんの挿絵がついた幼年童話です。1962年に刊行されたロングセラーで数々の賞を受賞した名作なので、赤い表紙に見覚えのある方も多いことでしょう。
中川李枝子さんとその妹の大村百合子さん(結婚後は山脇百合子さん)のコンビといえば、「ぐりとぐら」や「そらいろのたね」などのたくさんの絵本の名作が思い浮かびます。また意外なところでは、「となりのトトロ」のオープニングテーマ「さんぽ」の作詞も中川さんが手掛けています。
子どもたちにとっては、絵本や歌で小さな頃からなじんだ中川さんの語り口。それを直に感じられる幼年童話ということで、「いやいやえん」は絵本から児童書への橋渡しとしてぴったりです。
この本は、短い独立したお話を7つ集めています。
お話は「ちゅーりっぷほいくえん」「くじらとり」「ちこちゃん」「やまのこぐちゃん」「おおかみ」「山のぼり」「いやいやえん」の7本。
元気いっぱいで少しわがまま、悪戯大好きな保育園児しげるが、子どもの日常とシームレスに繋がったファンタジーの世界を行き来する楽しいお話。
表題作の「いやいやえん」はなんでも嫌だ嫌だというしげるが入れられてしまうほいくえんです。なんでも自由ないやいやえんですが、そこではいいことばかりではなくてしげるは元のちゅーりっぷほいくえんが恋しくなったようですよ。
他にしげるがお友達と積木で作った船でくじらをとりに出かけるお話「くじらとり」
保育園に行きたくて、赤いバケツを持ってやってきたこぐまの話、「やまのこぐちゃん」
など、素敵な童話がいっぱいです。
保育士(当時は保母)としても活躍していた中川李枝子さんだけに、子どもたちの保育園での様子は生き生きとまるで本当に隣にいるように感じます。
そして、子どもが想像力を発揮するような自然さで広がる、どこか懐かしいファンタジーの世界が素晴らしい!
どのお話も楽しく、わくわくするような展開で、かなりボリュームがある本ですが子どもたちを飽きさせません。
保育園を舞台にしているので、園児の時代に読み聞かせを行い、小学校低学年の時期に自ら読む本の導入にしてみてはいかがでしょうか?すんなりと読書の楽しみを知ることができそうです。
簡単な漢字も出てきますが、ルビが振ってあります。朝の読書タイムなどを設けている小学校もあるので、そのためにチョイスする本としてもおすすめです。